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塩見岳3052m登山

2010年7月に実施したACKUの第135回例会は当初平井一正名誉会員を案内して悪沢岳3141mに登る、という企画であったが椹島からの往復のコースは79歳を目前の氏にとっては計画に無理があった。賢明にも参加を辞退された。その埋め合わせと言うわけではないが、まだ頂上に立たれていない日本の3000m峰がもう一つあり、それが塩見岳だということでお供することになった。

◇ メンバー

   平井一正名誉会員 井上達男

◇ 日程

20100903日(金) 京都/近江八幡⇒松川⇒小渋ダム⇒鳥倉林道1650m駐車場

20100904日(土) 鳥倉林道登山口⇒三伏峠⇒塩見小屋(小屋宿泊)

20100905日(日) 塩見小屋⇒塩見岳往復 ⇒三伏峠⇒鳥倉林道 下山、帰宅

201093日 金曜日

 ◇ アプロ−チ

14:00 近江八幡駅出発

 京都にお住まいの平井先生にはJR近江八幡駅までご足労願った。予定の13:50着より一本早く近江八幡駅に到着された。金曜日の午後で高速道路の混雑もなく順調に松川インタ−を出て伊那大島の街中に着いた。そこのコンビニで夕食を仕入れて早速登山口の鳥倉林道1650mの駐車場に向かった。当初計画では一週間前の予定だったが、塩見小屋が満員で予約できずに今週になった。塩見岳も百名山の一つで賑わっている。

18:00 鳥倉林道駐車場 1650m

 明るい内に駐車場に到着。すでに20台ほどの車が駐車している。ここはトイレと水がある。持参したビ−ルと仕入れた弁当の夕食。暗くなるとサ−フの荷台にシュラフを敷いて早々と就寝。満天の星空、明日の晴天は間違いなし。


駐車場で夕食

9/4駐車場出発

201094日 土曜日


◇ 入山 (午前中快晴、午後塩見小屋ではガス)

4:15 起床

 朝食のラーメンと紅茶を済ませて身支度を整える。登山者が続々と出発していく。荷物は小屋泊まりなので軽い。行動食、非常食にツェルト、ガスバーナー、コッファーそれにFirst Aidは持っていく。水は1リットル持った。

5:30 鳥倉林道の駐車場出発  1650m

女性数人のパーティが出発する丁度その時、ゲートを抜けて出発した。ここから登山口までは自動車道路を歩く。夏場の最盛期、バスは登山口まで運行されているとのこと。9月に入ってもうバスは運行が終了している。



6:12 登山口 1770m

 登山届をここで提出。早速唐松林のジグザグ道を登っていく。よく手入れされた林で下草に青い花が咲いていて気持ちの良い場所だ。鹿害防止のために根元にテ−プが巻いてあるのはいただけない。まだ日が昇っていないので涼しい。ペースをぐんと落として登る。汗もかかず息遣いも荒くならないようなペースを作って歩く。急坂を登り終えるとなだらかな樹林内の道を行く。下草の少ない気の休まる道が暫く続く。

7:35 豊口山東の峠 2130m

 峠近く、右手の斜面がスッパリ切れている場所に熊よけに一斗缶が吊るしてあり、これを叩けと書いてある。熊が出没するのだろうか。草つきにはツワブキの大きな葉と黄色い花が目立つ。登山口から2ピッチでこの峠に達した。

8:58 塩川登山道との合流点 2425m

 休みのたびに家内が用意してくれた果物(梨、オレンジ、葡萄)を二人で頬張る。水分補給とおやつにぴったりだ。尾根の北側に付けられた登山道は木の梯子や橋が多数あり湿っていて滑りやすく気を使う。樹林の中で涼しい。やがて塩川からの登山道とGPS2426mで合流した。

ここからジグザグの急坂を登る。北に仙丈岳、甲斐駒ケ岳が見える。塩見岳も頭を見せ始めた。

9:45 三伏峠小屋 

 出発から6ピッチで三伏峠小屋に達した。

 小屋の前で休んでいると先ほど我々を追い越して行った「アラフォ−山ガ−ルズ」3人組が休んでいる。なかなか美人ぞろいだ。アメリカ人の若者が一人、重そうなバックパックで塩見方面からやってきた。広河原から来たという。3ケ月ビザで日本を旅している。旅行グッズ全てを背負っての南アルプスの縦走はきついと言った。稜線の急峻な岩場にも苦労したようだ。

10:04 697三伏山2615m

 地図には記載がないが三伏山には立派な道標が立っていた。そこでこの山を私の生涯1000山登山のリストに加えることにした。697座目だ。次に通過する本谷山が698番となる。


2130m峠にて


三伏山頂上にて

塩見岳を背にする平井一正先生

11:20 698本谷山2657.9m

 本谷山山頂は日当たりがよく暑いので少し北に進んで木陰で休憩。塩見岳がますます聳え立ってきた。

14:00 塩見小屋 2750m

  権右衛門山の南斜面を東にトラバースすると樹林帯の小さな沢に出る。水を期待したが沢は枯れていた。すこし休んで今日最後の登りに掛かる。思ったより早く塩見小屋に到着してほっとする。平井先生、ひとまず目標達成で握手。出発から11ピッチだった。

 塩見小屋は小さい。夏場だけ建てる寝床の棟は簡易テントをちょっと補強した程度のもの。トイレはHuman Wasteをビニ−ル袋に回収する方式だ。水は500ccのペットボトル一本が宿泊者に無料支給される。追加は500cc50円、トイレ用のパックは1袋のみ無料で追加が100円。女性には3枚まで無料支給されていた。

 夕食が5時となったので小屋の外でビ−ルを飲んだりしてゆっくり過ごす。シニア4人組と先ほどの山ガ−ル3人組が酒盛りしている。会話を盗み聞きしていると彼女たちのプロフィ−ルが判ってくる。長野から来たようだ。二人は独身で一人は最近結婚して旦那を放って山に来たとか。シニア4人組は新潟から。次の山、八海山に一緒に行く約束までできたようだ。次々に登山者が到着する。スパッツに半ズボンが女性の夏山ファッションらしい。いわゆる山ガ−ルスタイル。もっとも元ガ−ルが多いのだが。近づくまではかわいいお嬢さんかとときめくこともあるが、オババが圧倒的に多い。

 夕食は揚げ物が出た。一度に20人くらいが一緒に食べる。食べ終わって「さあ、温泉に入って寝るか」と冗談を言ったら隣で食事していたかわいい女性が「え、どこに温泉があるのですか?」ときた。「夢の中で入るのよ」と私が返すと彼女が「じぁ混浴で楽しみましょう」。一同大笑いした。

 狭い小屋での就寝だったが、キャンセルが出たとのことでゆったり眠れた。支給されたシュラフに潜ると暑いぐらいだった。

201095日 日曜日


◇ 塩見岳アタック (夜明けから8時頃まで快晴、その後は霧、時々曇り)

 今朝の晴天を期待して早々と寝床に着いたが、満点の星空の夜明けを迎えた。ラッキ−だ。

3:30 起床

4:30  朝食

 小屋の朝食は一度に20人。塩見小屋は定員40名なので二回に分けている。食事の時間が惜しい人達は弁当を予め予約していて起きるとすぐに出発していく。今年になって悪沢岳につづいて小屋泊まりの山行なので少しは慣れてきたが寝るのはテントが落ち着く。

 黎明の山々の上空がピンクに染まっていく。塩見岳が遮ってご来光は小屋では見られなかった。朝食を採らずに登っていった人たちはご来光を拝んだことだろう。

5:15 塩見小屋出発


黎明の仙千ケ岳、甲斐駒ケ岳


塩見岳頂上付近の岩場を登る

 食後に二人ともトイレに行く。行列が出来ている。簡易トイレのビニ−ル袋を便座に敷いて大小をする仕組みだ。女性も同じ仕組みなので小用の女性が結構速く済ませるので長く待つことなく5時15分に出発できた。


塩見小屋から塩見岳


前衛峰の登りから見上げる塩見岳

 登山道は前衛峰の登りから岩場が出てアルプスらしい景観となる。冬はきっと厳しい場所となるのではないだろうか。正月に東の岳沢から頂上に登った時はル−トの厳しさは感じなかった。今日の本峰の登りも岩場伝いだったがゆっくり登って西峰に達した。ここでまず平井先生と握手してすぐに東峰に向かう。

6:35-6:50  31 塩見岳 3046.9m/3052m

 塩見の頂上はちょっとした双子峰になっている。三角点は西峰で3046.9mとなっているが、東峰の方が少し高く3052mだ。山頂は混雑していたが、暫くすると早く出発した人達が下山して静かになった。快晴の眺望を楽しむ。今日は雲海の上にいる。どうやら午前中早くにも雲が上がってきそうだ。下界は霞んでいるが3000m峰はクッキリと輪郭が明確だ。光の具合も良いので写真の出来も期待できた。雲海の向うに縞模様になった富士山が襖絵のように浮かんでいる。

塩見岳には1967/1/4 河本リーダー、香川さん、中村さんと私の4人で岳沢から登頂している。43年前のことだ。北西の季節風が強くガスの中、睫毛が凍る悪天候の登頂だった。山の姿をはっきり見るのは今回が初めてなので私にとってもエキサイティングな登山だった。


塩見岳西(左、登山者の居る所)と東峰


間ノ岳、北岳をバックに

 平井先生は塩見の登頂が人生最後の3000m登山になりそうだと思っておられるようで、締めくくりの登頂として感激されている。お供できて私も幸せだ。「先生とは長いお付き合いになりましたね。」「井上のおかげで塩見に登ることができた。一人では登れなかった。」「まだまだお元気、次はどこにいきましょうか」といった会話があった。


平井一正78歳と11ヶ月。井上達男63歳  塩見岳頂上


◇ 下山

8:05   塩見小屋出発

雲海に浮かぶグラデ−ションのついた富士山



悪沢岳3143m


登れなかった悪沢をバックに塩見岳

10:05 本谷山

 塩見小屋から2ピッチで本谷山と人18号原稿と三伏山のコルまで進む。登りは30分ピッチだったが、下りは平井先生約50分連続して歩くことが出来た。下りでネンザなどすると良くないのでスピ−ドを極力抑えて下る

11:35 三伏峠

12:40 清水

 このコ−スの唯一の水場だ。塩見小屋で1リットルの水を買って、500ccにはCCDを入れて下ってきたが、ここの冷たい清水で生き返る。

13:23 2130m峠 

 三伏峠から2ピッチでここまで下った。水場のトラバ−ス道は湿っていてスリップしやすいので神経を使う。先生は慎重に歩かれるので問題はなかった。

14:20 登山口

 登りはここから三伏峠まで5ピッチで登ったが下りは3ピッチで下ることが出来た。平井先生、今日は元気だ。

14:55 駐車場帰着

 登山口から駐車場までは自動車道路だ。先生を残して先に下る。お茶を沸かして待っている、ということで急いで下ったがお茶が沸くまでに先生も駐車場に帰着された。熱いコ−ヒ−で渇きを癒して早速帰途に着いた。恵那、土岐間で19kmの渋滞に巻き込まれたが順調進んで近江八幡駅には19:45到着。平井先生は9時にはご自宅に到着されたとのことだ。

(井上達男 記)