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剣岳合宿 (崗日嗄布山群学術登山隊トレ−ニング)

崗日嗄布山群学術登山隊の4回目の合宿は7月連休に穂高で行う予定であったが梅雨の長雨で中止になった。神戸大学山岳部の夏合宿が剣岳の真砂沢定着で実施され隊員の一部がこれに参加するのでシニア組の井上、山田もトレ−ニングのために独立パ−ティを組んで真砂沢に入ることとなった。

◆ 2009812日 水曜日

週末に加えて盆前後の高速道路通行料が最大1000円となったので車でのアプロ−チが安くつくようになったが副作用として渋滞が多発する。名神高速の渋滞で山田君が近江八幡のアパ−トに到着したのは23:15だった。彼の軽自動車から荷物をサ−フに積み替えて出発。


現役山岳部の皆さん
ポップコ−ンとビ−ルで歓迎してくれました。
シニア組
下山日(16日)は良い天気だった。


◆ 2009813日 木曜日


 富山電鉄立山駅近くの河原にある臨時駐車場に到着したのは午前3時前であった。SUVの後部荷台でゆったりと仮眠を取り6時に出発。ケ−ブルカ−は6:20発に乗ることが出来た。

7:19 室堂  GPS 2410m
 弥陀ヶ原あたりからバスは雲の中に突入し、雨模様となった。バスのガイドビデオが雪の谷の積雪の多さを説明するのだが今年は少ないのか僅かな残雪が認められるだけだった。街の雑踏並の室堂到着。早速雨具に身を包んで出発する。地獄谷に向かう遊歩道は左手から横殴りの風雨がバタバタと激しい音を立てて雨具を攻め立てる。すぐに膝辺りに湿気を感じ始めたのでゴア・テックスの性能劣化を懸念する。山の道具も10年が寿命なのかと思う。

8:28  GPS 2265m 浄土川を渡る(雷鳥沢)

10:15-10:17 GPS 2700m 剣御前の直下で風雨を避けて休憩

10:25 剣御前2750m通過

 案の定、小屋の前は風雨が強かった。

11:20 GPS 2480m 剣沢小屋

 霧の中、山田と少し逸れたが小屋の前で合流。

13:34 GPS 1775m 真砂沢ロッジのキャンプサイト到着 

 現役合宿のテントの隣に二人のテント設営。 夕方には雨が上がる。

◆ 2009814日 金曜日

現役は暗くガスの中を4時に出発。山田と二人で現役たちを見送って、我々は天気の様子見とする。
6:00もう一眠りしていると岩澤と一年生の
佐久間が戻ってきた。外は霧が晴れて快晴だ。何が起きたのか?

京大のワンゲルから参加している中澤君が夏道から長次郎の雪渓に乗り移るとき、スリップして転倒、運悪くピッケルのスピッツで口の中を刺して上歯茎を裂傷、前歯もぐらついたとのこと。剣沢の診療所に下山途上の近藤とCLの石丸が付き添って急行、ベースキャンプに戻った二人は診療結果次第で次の対応を決めるために待機となった。

8:00 医師ではなく、救助隊員の診断で病院に行ったほうが良いとのことで、岩澤、佐久間が中澤の個人装備を持って剣沢へ向かった。これらの判断は岩澤が石丸と連絡を取りながら決めていったが的確な判断であった。二人は崗日嗄布山群学術登山隊の隊員であるが、ここ23年でよく成長してきたものだ。山田と私は昨日の疲れもあるし濡れた装備の日干しなど、今日は快晴沈に決めた。一日テント内で惰眠をむさぼったり、濡れた衣料を乾かしたりして過ごした。こんなに何もしないで山の空気を満喫する一日は何十年ぶりだ。

12:00 石丸、岩澤、佐久間が真砂沢キャンプに戻った。

 3時頃から河原で焚き火。中澤が持ち上げた焼酎で歓談。岩澤に崗日嗄布山群遠征に参加を促す。

彼は説得に応じて参加を表明した。

 焚き火はいいものだ。対話が始まる。心が安らぐから胸襟も開いて話せる。山田と二人で登攀用具やテントなど担いで荷が重かったのでお酒などは車に置いてきたので中澤君の焼酎はありがたかった。早く傷を治して復帰してください。昔からよく言われている、「雪渓に乗り移るときと雪渓から降りるときが一番危険」をやってしまった。

◆ 2009815日 土曜日

4:45 GPS 1770m Start

 現役3人は源次郎尾根に向かう。一足先に出発した。

5:25 1960m 長次郎谷出合

 雪が硬い。軽登山靴では安定しない。長次郎を登る多くのパ−ティはアイゼンを装着している。私は夏山の剣岳雪渓でアイゼンを履いたことは一度だけ、池ノ谷右又の詰めで早月尾根に出る直前の急傾斜で氷化した雪壁でのこと。今回は横着して一人アイゼンを持ってこなかった。相棒は心の中ではきっと「歳も考えずに」と思っているのではなかろうか。彼も付き合ってアイゼンはまだ装着していない。

6:25 2250m 雪渓の切れた右岸の岩棚

 標高2300m2500mあたりまで長次郎の雪渓は消えて谷底の露岩の上を歩く。

7:40-7:50 GPS 2615m  5-6のコル 

 ここで単独でザイルも持っていない富山のF氏に追いつく。彼はいっしょに行動することを希望してOKした。

長次郎の雪渓は中間部がすっかり融解していた。
八峰6峰の登りから5峰を振り返る
チンネ
剣岳2998mを見上げる
7峰を懸垂下降するF氏
クレオパトラ・ニ−ドルの後方に爺ケ岳が望まれる
チンネ左稜線と五竜岳
池ノ谷乗越から長次郎雪渓を下る

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真砂沢キャンプ場の河原で焚き火を楽しんだ

9:05 GPS 2795m 6峰頂上

  A Faceのコルに間違って登り、懸垂下降する。F氏も当然懸垂する。

10:50 GPS 2870m チンネのコル

 多分7峰であろう、懸垂下降する。もう40年も前に通っているのだが良く覚えていない。その当時懸垂下降したのだろうか?そこから長いトラバ−スがクレオパトラニ−ドルまで続く。岩小屋があったように記憶しているのだが、ちょっとした庇はあったがそれらしいものには出会わなかった。

 クレオパトラ・ニ−ドルのコルへの踏み跡は岩小屋の右手のルンゼをやり過ごして右下に一旦トラバ−ス、そこからコルに登るのだが、手前のチョック・スト−ンのあるルンゼを20mほど登ってから間違いを確認。ここでも懸垂下降して出直す。井上のいい加減な示唆に山田が惑わされた結果であろう。まあ登ってみれば解る、という気分でのルート・ファインディングはよろしくない。このあたりの針峰群はドロミテの針峰群を思い出す。さすが剣岳という場所だ。

11:30 GPS 2850m 池ノ谷乗越

 チンネと八ツ峰の頭のコルからルンゼのガレを下ると池の谷ガリ−への懸垂下降が待っていた。浮石の多い斜面なのでクライミングダウンを嫌ってのアンカ−の設置なのか。懸垂が終わってからその必要性に疑問を持った。

12:20-12:50 GPS 2625m 熊の岩  水の補給と大休止

 池ノ谷乗越からは雪渓が80mほど下った所で岩が出て左右に分かれていた。長次郎の本流には繋がっていない。日射で少し緩んでいるがヒ−ルキックで下降できるようなコンディションではない。左右のシュルンドも口を開けているF氏もFixを活用して下る。2050m2ピッチで露岩に下り、そこから本流まではガレ場を下り、熊の岩の上流でやっとグリセ−ドを楽しめた。しかし、雪が堅く風紋があってスム−スに滑れるものではなかった。

 熊の岩にはテントが数張ある。F氏は仲間とここで幕営しているので別れる。雪解け水で咽を潤し行動食を食べる。

13:25-13:35 GPS 2260m

 スケーティングもクリセ−ドも疲れる雪の状態なのでゆっくり下り雪渓の切れた右岸の岩だなに移りしばらく下って再び雪渓に戻るところで休憩。

13:55 GPS 1990m 長次郎谷出合

14:22 GPS 1795m  真砂沢キャンプ場 帰着

 40年も昔の経験は生きているのかどうか、ル−トで見覚えのある場所はほとんどなかった。6峰フェ−ス群やクレオパトラ・ニ−ドル、チンネなどは良く覚えていたのだが、その他は新鮮な感覚で縦走できた。

 夏山の剣でアイゼンを使ったことがないのだが、秋が近づいて雪渓が切れ、氷化した部分が増えてくると使った方が良いのかもしれない。今回は大胆にもアイゼンを持参しなかったのだが山田君のやさしい確保のおかげで長次郎雪渓の右又最上部100mを安全に下ることが出来た。ザイルが良く役に立ったラウンドであった


◆ 2009816日 日曜日

5:30 テント撤収 真砂沢キャンプ場出発

6:15 長次郎雪渓出合い

6:40 平蔵雪渓出合

7:35 GPS 2230m  雪渓から右岸の踏み跡に移る

8:22 GPS 2450m  剣沢小屋

8:35-8:55   GPS 2515m  キャンプ場 水の補給 行動食

9:45-10:05  GPS 2750m 剣御前

11:05 GPS 2290m 雷鳥沢キャンプ場 水の補給

みくりが池と立山
剣沢キャンプ場付近から剣岳を振り返る

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 1000m登って500m下って最後に150m登る。これが真砂合宿の下山である。今日も良い天気。山田とゆっくり下ろうと言い合って出発。剣御前までは順調に登ったが雷鳥沢の下りで両足小指の爪を傷めて下りがつらい。地獄谷から室堂への登りは観光客に追い越されながら疲れた足で階段を一歩一歩確かめるように登っていった。

小矢部のSAで海鮮ドンブリを食べた。 1000円の高速は大渋滞。福井から賤ヶ岳SAまで断続的に渋滞した。近江八幡には10:30pm着。山田君はそこから加古川まで今一度運転を続ける必要があった。

(文責:井上)