タイトルイメージ 本文へジャンプ

富士山  
                               文責:尾崎竜平

☆☆行動記録

 期間: 2010年 12月3日〜5日

参加者:河西孝昭、田中俊甫、緒方俊治、中川勝八郎、橋本昭(関西大学OBHNA)、石原敏雄(大阪大学OB)、尾崎竜平

文中敬称略


12/3()  入山

8:00宝塚-15:00吉田口五合目-15:30佐藤小屋

 関西組(田中、緒方、橋本、尾崎)は宝塚駅に集合し、緒方の車でアプローチ。名神から中央道、河口湖道路を経て富士スバルラインへ。道中は晴れたり、豪雨になったり、ころころ変わる天気だ。富士山は雪線より上がガスの中である。河口湖駅にて中川と合流。

五合目駐車場では道路公社の方がやってきて、駐車場に車をおいていくことは禁止であると言われる。もしスバルラインが通行止めになっても、公社には文句は言わないと約束すると帰って行った。駐車場から佐藤小屋への道も道路公社によってか厳重なバリケードが施されていて、なんだか世知辛いものを感じる。

雪がところどころある道を歩いて佐藤小屋へ。雪は例年より少ないそうで、六合目から上にあるようだ。小屋には別行動の河西が到着していた。今夜の小屋泊まりは我々の他に、九州から来られた山岳ガイド藤原拓夫パーティ3名のみだった。

一時吹雪となり、風が強まり始める。天気予報では日本海を進む低気圧が明朝には北海道の北で急速に発達して970hpa前後となり、日本列島上の等圧線は10本を数えて余る。しかし寒気が入ってこないのが幸いである。

烈風のため便所への3mに覚悟が必要となる中、石原が馬返しより到着する。

どうなるかわからないが、明日は5:00食事、6:00出発の予定で就寝する。


12/4() 快晴  頂上アタック

快晴8:00佐藤小屋発-8:45六・七合目の中間(アイゼン装着)-13:00本八合目着(引き返す)-15:40佐藤小屋着



↑ 12/4(土)朝起きるものの風が強く待機中

 4:00起床するがすごい風である。「もう駄目」ムードが漂うが、とりあえず風待ちする。

5:30頃に馬返しから単独行のクライマー(山下さんとおっしゃった)がやってくる。躊躇することなく強風の中頂上へ向かっていくその姿は、ウェアからアックスまで赤と黒で統一されたコーディネートと相まって、さながらウルトラマンである。「よく行くなあ〜」



↑ 頂上アタックへ。六合目付近を登る緒方、橋本


↑ 登山道を覆うデブリに遭遇する。右・緒方、左・橋本

 空が明るくなってくる中で、小屋の外に様子を見に出てみたり、またストーブの前に座ったりを繰りかえす。空には雲一つない。行きたいような行きたくないような気持ちだ。尾崎は今回の山行が久しぶりで、山行前には子供を背負って六甲山(油コブシ)に登ってみたところ足がつりかけたことがショックで、自分の体力が気になっている。しかしだからこそ、少々風が強くても早めに出たいとも思う。

 「行けるところまで行こう」緒方リーダーの掛け声もあり7:00食事し、8:00小屋を出発する。メンバーは緒方、橋本、尾崎。中川は翌日残留してアタックするために、車に残置した荷物を回収し、その後3人に追いつく予定となる。

 快晴。風は朝方より弱まっている。気温高い。六合目過ぎでアイゼンを装着する。

しばらくすると登山道上に雪崩のデブリが押し寄せていた。ごく新しいもので、末端の高さは身の丈をはるかに超えている。デブリを乗り越え、登山道を迂回して登っていくにつれ、非常に規模の大きい雪崩だとわかってきた。最上部は八合目付近の吉田大沢で、破断面の幅は少なくとも150m以上ありそうな表層雪崩である。大沢のかなりの部分を巻き込み、中間部分では全層雪崩のように地面が露出。下部にかけて土砂交じりの黒々としたデブリが大きくうねりながら堰堤を乗り越えて夏道上に溢れ出している。弱層が形成されている箇所が他にも広がっているようで、雪崩の末端に誘発された小規模な表層雪崩の跡が夏道周辺にも見える。


↑ デブリを乗り越えて登る


↑ 吉田大沢を見上げると雪崩の跡が生々しかった


↑ 吉田大沢を見下ろす。デブリがうねりながら堰堤や登山道へ乗り上げている


そういえば小屋のご主人も雪崩を指摘していた。登山道から東方の沢の様子もわかるにつれ、こちらも大規模に雪崩れていることがわかる。

こんな状況ではあるが、デブリのわきをスッタカスッタカ通過し、広大な斜面を登っている時は、大げさだが海外の山でも登っているようなスケール感を感じる。来てよかったなあ、と感じた瞬間だった。はるか下の方にはすごいスピードで追いついてくる中川が見え、これまたスケール感をそそる。

1時間毎に休憩しつつ進む。登るにつれ風は強まり、固く氷化した斜面も増えてくる。小屋の下など随所で急斜面が出てくるが、緒方リーダーの素早いステップカットで前進する。さすがである。妻に富士山行きの許しを得る時、「緒方さんがリーダーなら(ドグサイあなたでも)大丈夫であろう」との言葉をもらった尾崎であった。

 表層雪崩となってずれた雪のスラブが落ち切らずに網目状のまま凍っていたり、少し前までデブリだったんだろうなと思わせる不自然なデコボコ斜面があちこちに広がっている。

それらを縫って須走口登山道が上がってくる尾根状へ斜上すると本八合目だ。1300着。眼前に広がる頂上への広大な斜面は、まぶしい陽光を浴びテラテラと光っている。ここで中川も追いついてきたが、風も強く雪面も固い、時間も少ないので引き返すことにする。赤いクライマー山下さんは頂上へ進むようだ。


↑ 八合目へ向けて登る。左側の沢状も雪崩のデブリに覆われている


↑ 吉田大沢上部を見ながら氷化した斜面を登る

↑ 氷化した斜面を駆け上がる中川

↑ 本八合目で記念撮影。ここから引き返した。左から緒方、橋本、中川

すっかり日陰の登山道を下るがクラストしていて緊張する。午前中とは違い、下からは数えきれないほど多くのパーティが登ってくる。途中でテント泊をするパーティが多いようだ。七合目を過ぎると斜度も緩みほっとする。

15:40頃に佐藤小屋着。お疲れ様でした。小屋で皆さんに出迎えていただく。河西、田中、石原も七合目まで登ったとのこと。

そのうちに山下さんも下山して来られたが、風も強く頂上へは行かなかったとのこと。今日は吉田口からは誰も登頂できなかった様子だ。下山後に知ったが、御殿場口方面の八合目ではこの日の午後に滑落事故があったのだという。

周辺にはテントもいくつかできており、小屋にもガイドパーティ中心に40人以上の人が到着している。とても賑やかだ。夜は坂西さんの援助をいただいた神戸牛のしゃぶしゃぶを食べる。酒もよく飲み、かなりハイになってしまった。小屋にいらっしゃった色々な方に大声で話かけていたように思う。頂上への未練からちょっとややこしいことを言ったりもしてしまいました。失礼しました。



↑ 12/4(土)夕食。しゃぶしゃぶをいただく

12/5() 快晴  下山

 6:30中川、石原が頂上アタックへ出発する。快晴で風も弱まっている。

 9:00過ぎ河西馬返しへ徒歩下山。緒方、田中、橋本、尾崎も下山。河口湖駅前にて入浴して食事。帰途、甲府との境の御坂峠から富士山を拝み、帰神する。中川、石原パーティも無事登頂し14:30佐藤小屋着とのことだった。

↑ 12/5(日)帰り道、御坂峠より河口湖と富士山を振り返る

☆☆ 感想

山岳部1年生の時以来9年ぶりの富士山でした。山自体は登頂なりませんでしたが、小屋生活を満喫させて頂きました。私個人は営業小屋に泊まるのは初めてでしたが、先輩方と佐藤小屋ご一家、同宿のパーティの方のおかげでとても楽しく過ごさせてもらいました。

これからも山へ登り続け、少しづつステップアップしていこうと思います。皆様ありがとうございました。